―ジビエートプロジェクト語録―
『自分の立ち位置ってどこなんだろう、と考えていた時、ジビエートに出会ったんです』(前編)
Vol.4 吉田健一(吉田兄弟)
世界で成功を収めた日本のクリエイター達が、改めて日本の“和”を見つめ、世界へ発信する事をコンセプトに集まったのが、ジビエートプロジェクトである。第四回は、日本の伝統楽器・三味線の第一人者、吉田兄弟こと、吉田健一氏。「ジビエート」との出会い、そして、三味線業界への想いを語った。
―今年でデビュー20周年なんですよね―
(吉田)「19歳のときにデビューして20年。当時、三味線で話題になるというのは我々だけ。今では若手の奏者も沢山増えました。三味線の大会も増え、大学のサークルも活発で、大きくなって、だいぶ環境が変わったなと思います。20年経って、今度は自分達がどんなところに行くべきか、次の20年どうすべきか、第二段階に入ったんだと感じていますね。過去を振り返る、というよりも、今後どう前へ進もうかと、考えているところです」
―令和になって、色々重なっているようですね―
(吉田)「来年オリンピックもあったり、和楽器界にとっても、もちろん、日本にとってもこれから大きく世界へ自分達をアピールしていかないといけない時期に来たかと思いますね。“和”全体が、そういう状況だと思います」
―三味線に限らず、お琴の世界など和楽器全体がそうだと―
(吉田)「敗戦国だからこそ、和の文化が否定されてきた背景があって。和楽器というものが、小さいころから教育に関わる事が無かった。さらに和の文化は、自分達を守ろうと壁を作り、壁があり続けながら時代がどんどん進んでいったように感じます。中学生のころ、年寄臭いと言われ一時期辞めようと思った事もありました。ただ今となっては、海外の方は日本の文化に注目してくれて、SNSなどで発信してくれるようになりました」
―そうですよね。気づいてない自分達の魅力を海外が注目してます―
(吉田)「はい、自分達の魅力を発信する力を“付け直す”というか。一番日本人が苦手な部分ですよね。日本人は海外のものをカッコいい、と見てしまう事はありますが、自分達の文化を知る、学ぶことが重要なのではと感じています。実は今は教育のシーンでも和楽器は選択授業に中学校に入っているくらいですから」
―和楽器は、教育指導要領で2002年から選択授業に入ったんですね―
(吉田)「はい。そうなんです。私達が本格的にデビューしたのもこれがキッカケですね。その際に、学校で演奏を見せる奏者が必要だろう、それも学生に年が近い子たちが良いだろうと言われ私達が選ばれたわけです。当時は、文科省のお墨付きがあって活動していたんですね。ですからアーティストとして売ろうという発想は無かった。ただ当時私が茶髪で紋付き袴だったのでメディアウケして、テレビ、雑誌などに出るようになってしまい、あれよという間に本格的にデビューとなったわけです」
―20周年のタイミングで、ジビエートに出会いました。このプロジェクトに参加する意味を教えてください―
(吉田)「和をテーマにしたものって沢山ありますが、意外に横のつながり無いんですよね。以前から“どうして横で繋がらないのだろう”ってずっと思っていたんです。和に特化した、和をテーマに対して、クリエイターが集まってアニメを作るなんで、単純にワクワクでしか無いですよね。1ファンとしても(笑)。次の20年を見た時、まさに相応しいというか、自分にとってもチャレンジですし、吉田兄弟の立場としても、常にチャレンジしていかないといけない、という立場ですから楽しみでならないですね。単純にうれしかったですよね」
―ジビエートの出会いのキッカケは三味線メーカー「小松屋」なんですよね―
(吉田)「はい。そうなんです。小松屋さんからアニメ『ジビエート』のエグゼクティブプロデューサーである青木さんを紹介いただいたのが始まります。和楽器をやっていると和をやっている事に満足してしまいがちですが、青木さんとお会いして、演奏している自分に魅力が無いとダメで、改めて自分達が世界に向けてチャレンジしていく、必要性があるんだな、という事を再認識させてくれた人でした」
―ジビエートは、これからの20年に向けて気づきがあった機会なんですね―
(吉田)「はい、そうですね。5、6年前くらいに、自分達だけが前に行くんじゃなくて、横のつながりがあって1つの目標に向かった方がより力になるだろうと思い、和楽器フェスをやったりしてきたんです。ただ、目指すところが共有できる人が少ないな、と思うところもあり、ならば、自分たちが違うステージへひとつ上がって業界を底上げする、盛り上げることが大事なんだろうと感じたんです。吉田兄弟が新しい事や海外に出ることで、他の和楽器にも目が行く、また、私たちが日本の文化の入り口になりたいという思いが、ここ2,3年強くなりましたね」
(吉田)「文化庁の文化交流使として2016年にスペインの大学で三味線を教えたんです。そのときから、自分がどういう立場で、どういうポジションでやっていくのか、という事を改めて感じましたね」
―自分達の行動が指針になる、模範になるということですね―
(吉田)「はい、そうですね。責任感が出てきますね。自分達がデビューして、横のつながりを盛り上げようとしてもうまくいかなかった。自分の立ち位置ってどこなんだろう、と、ここ2,3年考えていた時、ジビエートに出会ったんです」
―まさに、その模範となるカタチが『ジビエート』なんですね―
(吉田)「そうだと思います。青木さんを通じて色んな方々に会う機会がありました。世界に対してのコラボレーションは、和楽器の世界では、常に洋楽器とのセッションを求められてきたんです。でも実は、日本というのは、アニメを代表するように、素晴らしいコンテンツがもっと沢山あるので、これを繋ぐことで、日本を代表するオールスターズが出来ると思うんですよね」
―日本の良いコンテンツを一気に知ってもらうために良い機会かもしれませんね―
(吉田)「まさにそうだと思います」
つづく―