―ジビエートプロジェクト語録―
『ジビエートで初めてアニメ音楽の扉を開く』(前編)
Vol.2 古代祐三
世界で成功を収めた日本のクリエイター達が、改めて日本の“和”を見つめ、世界へ発信する事をコンセプトに集まったのが、ジビエートプロジェクトである。どんな思いで関わっているのか、どうしたら海外で成功するかを取材からひも解くシリーズ企画。第二弾は、アニメ「ジビエート」で劇伴(作中BGM)を担当する古代祐三氏。過去のルーツをたどりながら、これからのこと、ジビエートへの期待を伺いました。
―「メガドライブミニ」が9月に発売です。イースも再注目されていますね―
(古代)「時が2周も3周もしている30年前の作品ですから、夢の中の話という感じですけれど、イースは私がメジャーになった代表作ですし、イースシリーズもまだ続いていて、ファンの方も多いので、感慨深いものがありますね。ありがたい事にゲーム音楽を長らく今までやらせていただいていて。最近の代表作と言えば『世界樹の迷宮』シリーズと『湾岸ミッドナイト』シリーズを手がけてます」
―長くゲーム業界にいたものの、アニメの仕事をするのは今回初めてと聞きました―
(古代)「ゲーム業界に入ったのは18の時からですから33年目になるのですが、アニメの音楽の依頼を受けたのが今回初めての事です。ちょうど1年前でしょうか、2018年にアニメ「ジビエート」の劇伴と相談された時には正直びっくりしましたね」
―33年間で初めてのチャレンジになるんですね―
(古代)「そうですね。このお仕事を受ける時、ひとつ心配していたことがあるんですが、ゲームもアニメも曲を作ることは変わりないとは思いますが、大事なのはその周辺の経験だったりしますから、その点は勉強させていただいてますね」
―ゲーム音楽とアニメ音楽。その違いとは何でしょうか?―
(古代)「まずプロジェクトの進め方が全く違いますね。ゲームは製作委員会とか無いですし、相手はゲームメーカーの担当者だけですから。また、情景描写がはっきりしているアニメと違って、ゲームは擬人化されたキャラクターが存在して状況によって変化する。アニメはストーリーが初めから明確にあるので、基本線を外さなければ自分にとって創りやすいなぁと感じてます」
『ゲームは、キャラクターを動かしてみて“あれ?”となるケースがある』
(古代)「ゲームは、特に新作の場合、動かしてみないと分からないことがあって。
組み合わせるとイメージと音楽が違ったとか、よくあるんです。
アニメはストーリ ーがあって音楽を創るので、やるべきことが明確になっていて、私にとってはやり易いなぁと感じています」
―なるほど。その点において「自分の強み」を教えて頂けますか?―
(古代)「ゲーム業界からアニメ業界へ転身される方のお話を聞くことがあるんですが、皆さんがおっしゃるのは、とにかく“曲数が多い"と言うんです。私はその点においては全く苦じゃないんですね(笑)。ゲームの場合、先が分からないまま黙々と作り続けるといった事をするんですね。だから数を作り続ける事は慣れてきた。アニメの場合は、作るシーンがはっきりしている。音楽の監督さんもいらっしゃる。ゲームの場合は、新作の場合、何も決まってないところからプロデューサーと『どういった音楽にしましょうか』から始まることがある。ゼロからイチを産みだす経験が、アニメ音楽にも活かされるんじゃないかと」
―それは心強いですね。それを踏まえ、ジビエートにチャレンジしてみようと思った理由などあれば―
(古代)「アニメは勿論ですが、スタッフを見て“うわっ”って思いましたね。天野喜孝先生は、子供のころからよく知っているアニメーターですし、こういう接点が出来るとは夢にも思ってませんでした。同じゲーム業界に居ながらも関わる事は無かったですから。私の場合はデザインも決まっていて、ゲームの開発に入ってから参加ですので。タツノコプロの時から見ていた、テレビアニメのキャラクターを作ってきた天野先生とお仕事出来る機会なんてそう無いので、ただただうれしいです。先生は本当に絵を描くことが好きなんだな、って感じますし、とても刺激を貰っています」
―古代さんもやはり“音楽を創る”のが趣味なんでしょうか?―
(古代)「私の場合、後天的なんですよね。ピアノも3歳のころから、母がピアノの先生だったのでバシバシ鍛えられて。まず、そういったところから入ったんですけど、その反動か、音楽の勉強はあまりしなくなって普通の学校に通っていたんです。高校生のころはゲームが好きで、ゲームセンターの音楽にハマってしまったんです。全盛期となるちょっと前から、ゲームセンターにずっと通っていて。当時パソコンを持っていて、ゲームセンターで“耳コピ”して、家で真似て音楽を創っていたんです。最初は、耳で覚えて譜面に落とし、ピアノで弾いてみてパソコンで仕上げて。ウォークマンを買って、ゲームセンターで直に録音し、ピアノで弾いてはパソコンへと。そんな感じでゲーム音楽にハマっていった感じですね(笑)」
後半につづく―