―ジビエートプロジェクト語録―  Vol.3 芹沢直樹・古代祐三(後編) 『モンスターの登場シーンは、淡々とした恐ろしさを表現したいですね』
2019.08.22 公開

―ジビエートプロジェクト語録―

『モンスターの登場シーンは、淡々とした恐ろしさを表現したいですね』(後編)

Vol.3 芹沢直樹、古代祐三

 

世界で成功を収めた日本のクリエイター達が、改めて日本の“和”を見つめ、世界へ発信する事をコンセプトに集まったのが、ジビエートプロジェクトである。番外編は、漫画家・芹沢直樹氏と作曲家・古代祐三氏の対談取材。これも『ジビエート』 が引き合わせた縁でした。

 

お互いがファン同士だったんですよね―

 

(古代)「はい。猿ロック、大好きだったんです」

(芹沢)「アクトレイザーやってましたね。サントラも買いましたからね」

 

「アクトレイザー」と言えば海外でうけましたよね。どういういきさつで海外に受けたんでしょうか―

 

(古代)「スーパーファミコン本体が発売されて、比較的早い段階でのローンチタイトルだったんです。ローンチタイトルの中で“やたら音が良い”とグローバルで評判になりまして」

 

そうですか、それで「アクトレイザー」が一躍海外で注目されたんですね―

 

(芹沢)「いやいや国内でも人気でしたよ。私は今でも職場で聞いてます(笑)。疲れた時にテンション上げたいと思う時は「アクトレイザー」を聴いてます」

(古代)「ありがとうございます。仕事でゲーム音楽を聴く方って多いですよね。スーパーファミコンで育った世代の方はスーパーファミコンの音楽が聴くとテンション上がると言いますし」

 

良い物はずっと受け継がれるんでしょうね―

 

(芹沢)「きっとそうでしょうね。私は今42歳で、中学生のころはゲームが好きでした。今はゲームをしないですが、そのころに感動したゲーム音楽を今も聴いているんです」

(古代)「そのころ世に出すゲーム音楽は全て良い評価を頂いていた時代でした。あの時代、スーパーファミコンの音楽が新しかったんでしょうね」

 

今のゲーム音楽と昔のゲーム音楽の違いってありますか―

 

(古代)「昔のゲーム機は音源が非常に制限されていました。それをどう使うか、どのように見せるかが技術の見せどころでした。そういうハードルは今のゲーム機には全く無くて、苦労も無くなりましたね。昔のゲーム音楽は、ゲームに合う合わないはあっても、音を聞いて“これ良いね!”となると即採用だったんです」

 

今までに1000曲以上作っているんですよね―

 

(古代)「そうですね、1000曲は優に超えています(笑)、先日、世に出ていないゲーム音楽を集めたCDを出しましたが7枚組ぐらいになりましたから(笑)」

 

漫画家と作曲家。仕事では普段会うことがない二人かと思いますが、『ジビエート』はクリエイターが一緒に集まってモノづくりしています―

 

(古代)「はい、初めての事ですね。なぜ会えないか、と言えば、ずっと制作現場に入っているからでしょうけれども、クリエイターさんとは、“打ち上げ”とかじゃないと普段会えないですよね。今まで、ゲームの世界でもそうでした。芹沢さんのような、キャラクターデザインの方と初めからお会いしてから作る、なんて『ジビエート』が初めてかと思います」

 

意外に、この組み合わせの対談もなかなか無いかと(笑)―

 

(芹沢)「そうですね。漫画では音を表現できないですからね。アニメとかドラマとか、盛り上がるところで音楽がある。漫画ではそれは無いですからね。仕事でも繋がりそうで繋がらない対談ですね」

 

今回なかなか接点が無い職業の二人が接点できてしまうプロジェクト『ジビエート』。突っ込んだお話になりますが、芹沢さんが作るモンスターの登場シーンは、どんな音楽になるのか、もう決まっていますか?―

 

(古代)「攻め方は色々考えています。ジビエートはゾンビがヒントなので、巨大なものがガッと来るイメージじゃなくて、淡々としたところから始まり、その恐ろしさを表現できると良いなと考えています。エグゼクティブプロデューサーの青木さんもそのあたりをチラっとおっしゃっていましたね」

(古代)「私はゲーム音楽から来ているので、どんどん盛り上げるような、派手目な音楽になりがちなんですが、映像作品の音楽となると、必ずしもそうではなくて、淡々とした音をあえて盛り上げる音楽は、ゲーム音楽ではなかなかできないことかと思っています」

 

古代さんは今回、『ジビエート』で初めてアニメ音楽にチャレンジするんですよね―

 

(古代)「はい。そういった意味では、試してみたい試みもありますね。ジワジワした怖さというのは良いと思います。ゲームはリアルタイムで音楽が変わってしまう、シーンにじっくり当てられないのです。どこのシーンでも付けられる音、を求められるんです。どこを柱にしてよいか悩んでしまうんです」

 

以前の取材でもお伺いしましたが、曲数を作ることは苦じゃないとか―

 

(古代)「はい、そうですね。テーマやシチュエーションさえ見えていれば作りやすいんです。」

(芹沢)「私も描きたい意欲はあるんですけどね(笑)」

(古代)「漫画表現の場合は、より具体的ですものね。読者を読ませる意味で。音楽の場合は、激しい音でも静かな音でも消費者に創造してもらえる幅がある。正解が無いですからね」

 

今日は貴重なお二人の取材でした。ありがとうございました―